〔文豪の著作に見るヒント〕
『他力』からのメッセージ
私が住んでいる八女市立花町出身である、五木寛之さんの『他力 大乱世を生きる100のヒント』(講談社、1998年)を読んでいます。
この本は英訳もされたのですが、仏教の教えが書かれているので、アメリカの編集者になかなか意図が伝わらなくて苦労したという話を何かで読みました。
他力というのは、私たちがイメージする『人頼み』『人任せ』というような意味でなく、
「自分の力でないこと=我が計らいにあらず、しかしおのずとなるべきようになること」
と、五木さんは書いています。
100のヒントの中には
- 『〈非常時〉を生き抜く強い思想』
- 『世界のすべては物語だと考える』
- 『21世記は大乱世、人心荒廃の大転換期』
など興味深いものが多く、まさに今、新型コロナウイルス感染症の混乱の中にある私たちへのメッセージのように感じました。
非常時に対峙しているという考え方
戦争や多くの大変な時期を経験してこられた87歳の五木さんは、現在が平和な時代だと思うのは間違いで、生きていれば毎日が非常時なのだと言います。
それだけの覚悟をして生きておられるということでしょう。
世界的な非常時の渦中にある今、目の前の出来事を客観的に捉えるのは難しいことですが、五木さんがおっしゃるように世界を物語のようにみてみました。
対策が見つからないウイルスに翻弄されている人類の様子は、まるでパニック映画のようだと思います。
新型コロナウイルスが確認されたのが昨年11月、WHO(世界保健機関)に報告されたのが2019年の12月31日、感染力の強いウイルスは世界に広がり、情報に振り回されて混乱した人々が、買い占めをしたり、意味のない予防法を熱心に行ったりしています。
感染症への恐怖、いつまでこの生活が続くかわからない不安、経済の心配、運動不足……そんな中で冷静に自分や家族を守る行動をとり、自分にできる貢献をする人々もいます。
知識や技術をもつ人々が対策に注力し、リーダーたちは日々対応に追われています。
映画的に展開するストーリーを願う
これに似たストーリーの映画を何本も観た気がします。
ここぞとばかりに詐欺をはたらいたり、デマを流して面白がったりする人々は、映画だったら自分がどのように描かれるかを想像して欲しいものです。
この後、映画であれば、何かのきっかけで対処法が見つかり、それまで批判し合っていた国々が手を取り合って拡大防止に努め、感染症の終息を迎えるというストーリーになるでしょう。
その時が早く来ることを願っています。
そしてこれを機会に世界各国の関係が変化し、平和に近づけたら……と思うのは映画的すぎるでしょうか。
現実世界に立ち戻ってみると…
五木寛之さんが書いているように、『人事を尽くすは、これ天命なり』です。
自分たちの力ではどうにもならないことばかりだけれど、大きな力で状況が動く時に、冷静にしなやかに生きていく備えをしておくということが大切なのだと思います。
海外居住の友人たちの話を聴くと、ロックダウンで買い物も散歩も距離を制限されているとか、ジョギングをした日本人が逮捕された等という事態が起こっているようです。日本も、これから地域封鎖があるかもしれず、それがどの程度の厳しさになるかわかりません。予定されている行事や学校会社の新年度もどのようになるかわかりません。自分や家族が感染することもないとはいえません。
そうなった時にどう生きていくか、考えておく必要があると思います。
あなたは今後の展開にどのように備えますか?
この記事へのコメントはありません。