〔PISAはどこを見ているか〕
結果発表をめぐって
生徒の学習到達度調査(PISA)の結果発表をめぐって、各報道で
「読解力大幅ダウン!」
「日本人苦戦!」
「顕著に低下!」
等、不安を煽る文言が飛び交っています。
学力調査というといつも、
- 内容は調査して結果を分析するのに有効なものなのか?
- 調査方法は適切なのか?
と疑問に思ってしまうのですが、そこは信頼できるものと仮定して、結果を見ていきたいと思います。
PISAで判るものは
このPISAの主催はOECD(経済協力開発機構)で、身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測るものです。
この調査は3年毎に15歳児を対象(日本では高校一年生)とし、
- 読解力
- 数学的リテラシー
- 科学的リテラシー
の3分野で実施されています。
平均得点は経年比較ができ、前回の調査からコンピュータを使う調査に移行しました。
私の注目点
日本の調査結果は数学的リテラシーと科学的リテラシーにおいて良好。
騒がれている読解力についてもOECD平均よりは上です。
ただ、私が注目しているのは習熟度レベル1以下の層が15%になり、さらにここ3回を見てみると、その割合が年々高くなっていること。
そして逆にレベル4、5の層の割合がここ3回で減ってきていることです。
これは、基礎的な学習が身についていない子が増え、応用的な問題が解けるであろう子の力が伸びていないということだと考えるからです。
文科省は調査結果をもとにそれを分析、考察した上で、
「PISA調査結果における各課題に対応した新学習指導要領を着実に実施すること」
を学校に求めていますが、前回も文科省の出した重点目標は的外れなものでした。
- そもそも、
「読むことの指導を重視せよ」
と言っても、これだけ学力差のある子たちを単純に年齢別にクラス分けし、一斉に指導しろというのが無理です。
基礎が身についていない子に長文を読ませても理解できずに負担になるだけ、その子たちに合わせた授業をすればそこをクリアしている子たちは退屈をし、それぞれの力を伸ばす機会を失います。
習熟度別に学習するシステムを作ること、そのために教員を増やすことの方が先ではないでしょうか。 - 「コンピュータ等の情報手段を適切に用いて、情報手段の基本的な操作を習得させよ」
と言っても、パソコンがない、指導できる教員が少ないという状況で、どうしろというのでしょう。
教育予算を増やすこと、専門性のある人材を学校に入れること等の方策が必要です。 - 「グラフや図表を読む実用的な文章(新聞や広報誌等)に触れる機会を充実させよ」
と言いますが、ただでさえ時数のノルマに追われている中で、どこにそんな時間を生み出す余地があるというのでしょう。
教育システムの疲弊
これまでの日本の教育システムではもう通用しないことは、文科省もわかっていると思うのですが。
日本の素晴らしい文化は継承しつつ不要な『学校の伝統』は切り捨ててスリム化し、教育予算を増やして教員や専門性のある人材を入れるのが、最優先だと思うのです。
そして学習に落ち着いて取り組んだり、自主的に問題解決を図ったりできるよう、学校生活にも家庭生活にもゆとりをもたせること。
ゆとりが大事
そのためには大人みんながゆとりをもって子供たちを見守っていける社会にすること。
自分の人生をよりよく生きるために必要な『本当の学力』は、ゆとりの中で生まれると私は思っています。
あなたはPISAの結果をどう分析しますか?
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