幻の蝶

【いつ時代のどの場所へ行ってみたいですか?】

〔大きな刺激〕

パントマイムを観に

先日、家族でパントマイム公演を観に行きました。
清水きよしさんによる、『幻の蝶』40周年記念全国公演の149回目でした。

清水きよしさんはパントマイムをはじめて52年ということですから、少なくとも65歳は超えていると思われますが、そのアクロバティックな動きに驚いてしまいました。
激しい動きだけでなく、ゆっくりの動きも素晴らしく、それは激しいものより逆に難しいと思うのですが、どれだけ鍛えていらっしゃるのでしょう。

夢中で追いかけたトンボ

その表現の深さと凄さ

パントマイムは言語を発しませんから、表情から指の先まで、全身の動きで物事を表現します。
それだけで、どこで何をしている場面なのかがわかり、その場面がつながってストーリーになっているのですから、すごいですね。

手品師になってマジックをするのに、物もトリックも必要ありません。

ペンキ屋になってペンキだらけになっても、後片付けも必要ありません。

風船に乗って空を飛んだり、蝶々になって飛んだり、翼が生えて空を飛んだりもできるのです。

死後の世界にも行けてしまいます。

必要なのは表現力で、その力でマイミストは、いつの時代にも行けるし、どこにでも行けるし、誰にでもなれるし、何でもできるのです。
私たちもしばし、その夢の世界に浸ってきました。

幻の蝶

全ての作品に感動

今回は、アンコール(パントマイムにもアンコールがあるのです)も含めて9作品が演じられました。

特に印象に残っているのは落語にヒントを得てつくったという『つり』という作品。
なかなか魚を釣ることができない釣り人が、とんでもないものを釣ってしまうお話です。
会場は大笑いです。

その次が『秋の日の思い出』という演目だったのですが、これがノスタルジックで郷愁を誘い、年配の方の中には泣いている方もいました。
一気に子供時代に戻って、なっている柿の実をとったり、とんぼを追い回したり、迷子になって心細くなったり、帰るのが遅くなって家の人に怒られたりしてしまいました。

『いのち』は、亡くなったおじいさんの最期を、そのまま作品にされたそうです。
人間としての生命を手放し、老化した身体から魂が抜け出して軽やかに旅立つ場面が、美しく表現されました。
この作品は難解で、誰にもわかってもらえないだろうと思っていたのに、ドイツ公演でドイツの方が「『いのち』が心に残った」と言ってくださって、とても嬉しかったそうです。

生命の象徴

世界中で通じる表現力

清水きよしさんは『空間の詩人』と呼ばれるマイミストで、海外でも高い評価を得ているそうです。
言葉を介さないので、絵画や音楽と同じように、世界じゅうに通じるのですね。
その場、その時限りの美しい芸術作品を堪能した時間でした。

あなたはいつの時代の、どの場所へ行ってみたいですか?

ススキの穂

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