〔つくり出された差別の無意識性〕
アメリカの教室で行われた実験
あなたは、1968年にアメリカのアイオワ州の小学校で行われた、人種差別についての実験授業をご存知でしょうか。
『青い目 茶色い目』という動画を観た方もいるかもしれません。
実験授業の最初、担任のジェーン・エリオット先生は受け持ちの3年生たちに
「差別されているのは誰?」
と問いかけます。
子供たちは
「黒人」
「インディアン」
などと答え、
「どうして差別されるのですか?」
という問いに
「肌の色が違うから」
「バカだから」
などと答えます。そこで先生は、
「差別された人の気持ちがわかりますか?差別された人の気持ちは、されてみないとわかりません」
と説明し、その1日は『青い目の子が優秀で、茶色い目の子がダメな子』というルールを設定します。実験と聞いてちょっとはしゃいでいた子供たちも、このルール設定の時には、戸惑いの表情を見せていました。
ところが、先生が茶色い目の子たちに黒い襟をつけさせ、
「○○は動作が遅い。やっぱり茶色い目の子はダメね」
などと、ことあるごとに差別発言を繰り返すうち、子供たちの中にも差別意識が芽生え始めるように見えます。
「茶色い目の子が悪いことしたら、その定規で叩けば?」
と言ったり、青い目の子が茶色い目の子をからかって喧嘩になったり。翌日、先生は『茶色い目の子が優秀で、青い目の子がダメな子』と、逆のルールを設定します。
すると今度は、茶色い目の子たちが有意な立場を楽しみ始めるように見えます。
実験授業の最後に先生が
「差別されている時、どんな気持ちだった?」
と尋ねると、子供たちは
「鎖に繋がれた犬になった気分」
「一生牢屋の中にいなさいって言われた感じ」
と答えます。
そして、目の色や肌の色が違っても差別してはいけない、差別されるとそういう気持ちになるのだということを確認して終わります。
この記録を見て、こんなに早く影響が出るのか?と驚きますし、青い目の子たちが茶色い目の子を(逆も同じく)からかって楽しんでいるように見えるのが怖いなと思いました。
権力側が行う差別発言は影響が大
今の時代、日本で行ったら大問題になりそうな授業ですが、この記録動画を観ると、大人の差別発言が子供たちにどのような影響を与えるかがよくわかります。
ジェーン・エリオット先生はマーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺をきっかけに、この授業を始めたそうです。
身近に多く存在している差別意識
日本にいると人種差別を感じることはあまりないかもしれませんが、実はインターネットの中では、ある国の人々を差別するような発言がかなり出てきます。
例えば凶悪事件が起きた時、
「犯人は〇〇人だろう」
という具合です。
北海道にいた頃は、アイヌ民族への差別が残っているのだなと思ったことがありました。
また、教員時代にはクラスの中でも、障がいを抱えた子、成績の良くない子、貧困家庭の子への差別意識を感じる場面がありました。
セブに住んでいた頃は、日本人は優遇されていたので、いつも居心地の悪い思いをしていました。
差別意識というのは自分ではなかなか気づけないものだから、怖いなと思います。
人種差別についての実験授業を振り返ったひとときは、私の中にも何かしら差別意識があるのかもしれない、どんな時にそれを感じるかなと、自分の中の差別意識と向き合う時間になりました。
あなたはどんな場面で差別を感じますか?
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